いったい何時間眠ればいいんだ???  睡眠に関する「最も基本的」、なのに「曖昧な」疑問について。

「適切な睡眠時間は個々人によってまちまち」というのが定説。では、どうやって自分の最適値を見つけるのか。7時間を目安にして最適値を探ってみて欲しい。


「眠る時間がもったいない」と思っていないだろうか。「眠ってるヒマなんてないよ」という声を、確かに良く聞く。けれど「本当は睡眠時間を削ってガンバッている方がもったいない結果になっている」という事が、最近の研究で明らかになって来ている。効率を極限まで求められる現代社会は、もはや「睡眠を削って、起きている間にもっともっと詰め込む」という根性論では乗り切れない。社会人の一人一人に、金融に関する基礎的な知識が必要とされているのと同様、「睡眠」についても正しい知識と理解が必要になって来ているのだ。これを「睡眠リテラシー」と呼びたい。

 

最近の調査・研究の結果から、次の二つの事がわかって来ている。 

 

1.     多くの成人にとって、健康に支障をきたさず日中に過度の眠気に襲われない(すなわちアタマがクリアな状態)睡眠時間は、6時間半から8時間と考えられている。

これは、日本やアメリカの大規模調査で明らかとなった睡眠時間と死亡リスクとの関係や睡眠時間と肥満の関係などの睡眠時間と健康の関係を示す多くの科学的事実から推測されている値であり、信頼性はかなり高いものだろう。また、当然だが、睡眠時間が短いと日中に過度の眠気に襲われやすくなる。4時間睡眠を1週間続けると、いわゆる「老化」現象が起き、「生活習慣病関連の変化」が起こるという報告もある。睡眠の質はもちろん大切だ。そして間違いなく量(時間)も大切なのだ。深い睡眠だけを獲得して「効率的」と考えるには少々無理がある。

2.     必要な睡眠時間は人それぞれ異なり、個人差がある

多くの成人にとって適切な睡眠時間は、上記の通り6時間半から8時間である。しかし、「僕は7時間くらいが丁度いいみたいだ。8時間寝てしまうとカラダが少し重く感じるんだよな」という人もいるし、「7時間じゃ眠くて仕事にならない」という人もいる。ところで6時間未満の睡眠時間しか必要としない人をshort sleeper10時間以上の睡眠時間を必要とする人をlong sleeperと呼ぶことがある。そういった人も少数派だが存在すると考えられているが、科学的に明らかになっていない部分が多い。short sleeperは「6時間未満の睡眠時間で睡眠負債(後述)がほとんどない」などの基準で人口の1%程度いると推定されている。しかし睡眠負債が表面に現れないのは休日も忙しく睡眠時間を確保できていないだけという可能性もあるのである。必要な睡眠時間は年齢によっても変わってくるので、個々人が自分のカラダと対話をしながら探し出してゆく事になる。

 

この二つの事実から、まずは「7時間」を目安に、自分が覚醒時にもっともパフォーマンスが良く、日常のクオリティも高い「自分の最適睡眠時間」を探し出すことを提案したい。探し出す際のポイントをいくつか挙げてみよう。

 

a. 休日と平日で睡眠時間に差がある人は平日足りていない睡眠(睡眠負債)を休日に補っていると考えられる。睡眠負債がほとんど無く、日中に過度な眠気を感じない睡眠時間があなたにとって最適な睡眠時間である可能性が高い

 

b. 「8時間神話」に縛られる必要はない。「8時間眠らなくては」という強迫観念がある人が

多いが、8時間以上の睡眠時間が必要であるという根拠は特にない。8時間以上の睡眠時間が必要な人もいるかも知れないが、あなたもそうとは限らない。

 

c. 「睡眠周期(sleep cycle)」にも縛られる必要はない。そして過信も出来ない。ノンレム睡眠とレム睡眠を周期的に繰り返しながら一晩の睡眠が構成されているという事は、ご存知の方も多いだろう。ノンレム睡眠が浅い第一段階から、第四段階まで深くなって行き、レム睡眠が出現するというサイクルで、1サイクルは約90分だと言うのが定説だ。さらに、人の睡眠は90分ごとに浅くなるから、睡眠時間は90分の倍数にした方が良いなんて言われることもある。これは本当だろうか? ピッタリ3サイクルの4時間半の睡眠よりも、5時間睡眠のほうが目覚めが悪いだろうか?(例えば、いつも朝6:30に起きている人が90分の倍数にするために睡眠時間を30分削って6:00に起きたほうが目覚めが良いだろうか?)

実はこの睡眠周期の長さは個人によってまちまちだ。同一人物でも日によって違ってくるし、一晩の中でも違ってくる。だいたい70〜110分という範囲で散らばっているというのが実態である。十分にタイミングを計ったつもりでも、90分後に睡眠が確実に浅くなっている訳ではないのだ。90分の倍数でないからと言って、不安になる必要も無いし、90分の倍数だから効率的だと安心するには根拠として弱い。自分の睡眠時間は、睡眠周期とは少し距離をおいて模索した方が良いだろう。

 

d. 「朝型」と「夜型」は存在する。個人個人の生体リズムの違いで、覚醒時のパフォーマンス

のピークが朝方に来るヒト(仕事は朝が一番だと感じる事が多い)と、夕方に来るヒト(朝っぱらからアタマがまわるなんて考えられないと感じる事が多い)がいる。多くのヒトはこの両極端の間で、「標準的な」パターンに属する。全ての人に何時に眠って何時に起きるのが良いという時間がある訳ではなく、ある程度のズレには神経質にならなくても良いだろう。

 

34時間程度という短時間睡眠で時間を有効に使おうという本を目にすることがある。どんなに極端な「短時間睡眠法」も、short sleeperが僅かに存在する為、それなりに「効いた」と感じる人が出てくるかもしれない。しかし前述の通り、一般的に自分がshort sleeperである可能性は低いのだ。

 

日常のパフォーマンスやクオリティを向上させる為に食事や運動、飲酒等の生活習慣を意識すると同時に、「睡眠リテラシー」を高めて「睡眠」とも積極的に向き合って行きたいものだ。


Jul. 22, 2009

Kenji Oishi 睡眠改善インストラクター*

 

注)このコラムでのアドバイスは、基本的に健康な方を対象としています、何らかの持病をお持ちの方は、必ず医師に 

  ご相談下さい。

*「睡眠改善インストラクター」は、日本人の睡眠の改善を目的に設立された非営利団体「日本睡眠改善協議会」が「睡眠に関する正しい環境と生活習慣のアドバイス」の実施を目的に育成するインストラクターです。

 
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