テレビ、ラジオから雑誌、書籍にいたるまで多岐にわたる活躍を続ける山田五郎さんの日常は、至る所こだわりに満ちている。人間の「食う寝るあそぶ」に並々ならぬこだわりを持ち続ける山田さんの元気の秘密の一端がいま明らかに? 爆笑対談の後編!日本人よ、もっと寝よ!
三橋 睡眠はやはり生きるベースとなるものですから、睡眠についての深い意識がもっと人々の中に浸透していって欲しいなあと、私は常々思っているのですが。
山田 思いますねえ。先日もあるシンポジウムで話したんですが、どうも寝ることと食べることには、ある種の悪いイメージがつきまとう。怠慢、怠惰、欲望に勝てない......。要するに、寝たり食べたりすることは、意志が弱い結果とも考えられがちなんですね。食べることの方はグルメだ食育だと肯定される場合もありますが、寝ることが褒められるケースはあまりないような気がします。
三橋 (苦笑)。
山田 昔は「子どもはよく食べよく寝るのが仕事」みたいにいわれたものですけどね。僕らが子どもの頃なんて、夜7時とか8時になればもう強制的に寝かしつけられていた。寝ないことイコール怒られることだったんですよ。でも最近は子どもの世界でも、寝ないとだめだっていう価値観が薄れてきているような気がします。実は食べることについての価値観も同様で、最近は子どものうちから「食べ過ぎてはいけない」とばかり教えられる。昔は「男はガーッと食ってガーッと働いてガーッと寝るのが一番」だったから、食べない奴は「食が細い」とか言われていじめられたもんですよ。寝ることに関しても、寝てばっかりいるとダメな人みたいに言われちゃうでしょ。でも、少なくとも子どものうちは、「寝ない方がダメなんだ」って教えた方がいいんじゃないかと思います。
その一方で、大人の世界では不眠で悩む人が増えていて、雑誌でもよく「安眠グッズ」が特集されていたりするわけです。でも、紹介されているのはアロマキャンドルやCDといった周辺小物が中心で、本格的な寝具としては枕くらいしか出ていないことが多いような気がして不満です。これは別にパラマウントベッドさんの取材だから申し上げるわけではありませんが、本気で快眠を考えるなら、まずはベッドを紹介すべきでしょ? 僕も編集者でしたから、ベッドの撮影が大変だったりシーツやマットが絵になりにくいのは判りますけど(笑)。どうも日本人は、問題を解決する際に小さい部分から先に目がいきがちで、大きな本質が見えなくなる傾向がある。一番の決め手になる快眠グッズは、どう考えてもベッドですよ。
三橋 睡眠環境を整えるのには、私もそこが一番本質だと思います。
こだわりの㊙睡眠アイテム
三橋 寝具の他に、よく寝るために心がけていることはありますか?
山田 それが、実はあまりないんですよ。何しろすぐ眠れちゃうんで(笑)。ベッド、マット、シーツ、フトン以外にあえていえば、昼間に寝ることが多いので暗くするための遮光カーテンや、空気清浄機と加湿器を使っていることくらいですね。
三橋 空気にも気を配ってらっしゃると。
山田 加湿器も、加熱して蒸気を出すより水を自然蒸発させるタイプの方が自分には合っているような気がして。以前は某外国メーカーの円盤が回って蒸発させるやつを使っていたんですが、かさばる上にぶつかるたびに水がこぼれる(笑)ので、今は某国産メーカーの空気清浄機と一体型のものを愛用しています。
三橋 大きいんですか?
山田 以前使っていた加湿器と空気清浄機を合わせた大きさよりは、ずっと小さくなりましたけどね。前の加湿器は本体下部のトレーに水をためる構造だったから、移動したり足がぶつかる度に水がジャポッて感じでこぼれ出てくるのが悩みの種だったんですよ。
あと寝るときに必要なものといえば......、そうそう、たまに寝付けない時にはCDを聴きますね。それも音楽ではなく落語のCD。なぜかはわかりませんけど、寝付きやすいんですよ。友人のみうらじゅんも同じことを言っていて、彼は米朝とか上方落語がいいらしいんですが、僕はもっぱら五代目の志ん生ですね。「火焔太鼓」とか騒々しくておよそ寝る感じじゃないのに、聞いてると不思議に落ち着くんです。
三橋 声の質が安らぐとか。
山田 いや、癒しにはほど遠いダミ声ですよ、志ん生は。そもそも落語というやつは、お客が寝ちゃったらまずいはず(笑)。なのになぜ寝付けるのか、不思議ですね。落語を聞かないときは......、普通に本を読んだりしてますよ。
三橋 何かお好きなジャンルってあるんですか?
山田 いや、そのときどきの仕事に必要な本を読むんですけど、洋書だと速攻で寝付けますよ。ひとつの文章のピリオドまでたどり着かないくらい(笑)。漫画とかだと、つい読み込んじゃうから駄目ですね。せっかく眠くなっても頑張って最後まで読んじゃいますから。早く寝付きたいときは、洋書を読むに限ります。
三橋 自然に儀式的なことを取り入れてらっしゃるのかもしれないですね(笑)。
こだわりの仕事の数々!
三橋 今お仕事で力を入れてらっしゃることは?
山田 2年前に幻冬舎さんから出した『知識ゼロからの西洋絵画入門』の続編を作っています。前著では誰でも知ってる34人の巨匠の代表作を解説したんですが、今回はルネサンスやバロックといった様式ごとにより多くの画家と作品を紹介して、「ルネサンスってよく聞くけど、どんな時代で絵画にはどんな共通点があったの?」みたいな素朴な疑問に答えていければと思っています。この半年くらいかけて構成して、そろそろ原稿書かなきゃなって段階に来てますね。美術の楽しさをわかりやすく伝えたいという思いは編集者時代からずっとあります。BS日テレでやってる『ぶらぶら美術・博物館』という番組(註・タレントのおぎやはぎさんや相沢紗世さんたちが出演し、山田さんがナビゲーターを務める)も、「脱力感がいい」と変な誉められ方をしてますが(笑)、実は僕なりに相当力を入れているんですよ。
あとは......、寿司のイラストですかね。寿司の連載を始めたんですよ。前々から寿司は変だと思っていたので(笑)。あんなに高価なファストフードって、世界中に他にないでしょ。ファストフードなのに値段的にも格的にもその国のフルコースの料理と平気で肩を並べる料理が、寿司の他にありますか? ピッツァがいくらイタリアを代表する料理だといっても、ピッツェリアがミシュランで三ツ星を取ることも、リストランテと同格に語られることもないですよね。なぜ寿司だけが? とずっと考えていたんですが、どうやら銀座という街に原因がありそうだと気づいたんです。「銀座のクラブ」と「銀座のすし」には、単に地名だけではない特別な意味がある。そこに秘密がありそうだ、って。
三橋 それは面白そうですね。
山田 そんなことを考えていた矢先に、この雑誌から連載のお話をいただいて......(と、雑誌「銀座百点」を持ち出す)
三橋 あー、「銀座百点」! 以前、銀座の癒しスポットをレポートしたことがあります。銀座界隈では有名ですよね。
山田 そうなんですよ。これはもう神の啓示だと思って、「銀座のすし」で行きましょう!と。でも、取材費がかさむテーマなので難色を示されるかもしれないと勝手にビビッて、「なんならイラストも自分で描きますから」って、うっかり言っちゃったんですよ(笑)。白黒ページの連載だから、鉛筆でちゃちゃっと描けばいいだろうと軽く考えていたんですね。ところが、いざ描いてみると、これが恐ろしく難しい。プロの画家に相談しても、「寿司は鉛筆で描くのには向かない」と言われたくらいで。
三橋 シンプルなだけにね。
山田 はい。コハダやタコみたいに模様やディテールのあるものはまだ描きやすいんですが、イカや白身のようにシンプルなものになるとお手上げで。しかも掲載サイズが小さい。
三橋 陰影とか、書き分けるだけで大変そうですが(笑)。
山田 だから、合う人全員に無理やり見てもらってるんですよ。ちゃんとネタがわかるかどうか。というわけで、三橋さんも問答無用で見て下さい(笑)。
一同 (イラストを見て)すごーい!
山田 コハダとトロって、わかります? でも、まだ美味しそうに見えるところまで行ってませんよね。シズル感や照り感を、鉛筆で出すのが大変で。何度も描き直して「銀座百点」の編集部の人にこれでどうですか、これでどうですかって見せるもんだから、「もうイラストはいいから原稿を書いてください」って言われちゃって(笑)。
パラマウントベッド社開発の「スマートフィット ピロー」を手に興味津々の山田さん。睡眠についてもひじょうに強いこだわりと関心をお持ちだそうです。【三橋美穂さんの取材後記】
さすが山田さんは、睡眠の知識も豊富! 寝具も実際にいろいろ試されていて、こうして情報を精査しながら、あの博識の山田五郎さんが作られていくのだと感じました。いろんなことに興味を持たれている山田さん。「知りたい」という欲求が、人生を豊かにしてくれるのだと思いました。
みなさんも、自分の眠りの傾向や特徴を知ることは、自分を見つめる良い機会になります。取り組んでみてください。
(写真・森亨/構成・山崎隆広)
山田五郎 やまだ・ごろう(編集者・評論家)
1958年東京都生まれ。上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し西洋美術史を学ぶ。卒業後、㈱講談社に入社『Hot-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は時計、ファッション、西洋美術、街づくり、など幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。著者に『百万人のお尻学』(講談社+α文庫)、『20世紀少年白書』(世界文化社)、『山田五郎のマニア解体新書』(講談社)、『知識ゼロからの西洋絵画入門』(幻冬舎)、『純情の男飯』(講談社)など。TVは『出没!アド街ック天国』(テレビ東京)、『PON』(日本テレビ)、『ぶらぶら美術博物館』(BS日テレ)、他レギュラー出演中。ラジオは『東京REMIX 族』(J-WAVE)、『デイ・キャッチ』(TBSラジオ)他にレギュラー出演中。雑誌メディアも『世界の腕時計』(ワールドフォトプレス)、『月刊一枚の絵』(一枚の絵(㈱))他にて好評連載中。
三橋美穂 みはし・みほ
快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部門長を経て独立。心の環境、体の環境、睡眠の環境を整えることが快眠の3つの柱と考え、睡眠とストレス、食事、色彩、体操、呼吸法、寝具などとの関わりについて研究。講演や執筆、個人相談を通して、眠りの大切さや快眠の工夫、寝具の選び方などを提案している。特に枕は、その人の頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど。睡眠を多角的にとらえ、その幅広い知識と、実践的でわかりやすいアドバイスには定評がある。ベッドメーカーのコンサルティングや、ホテルや旅館の客室コーディネイトなど、企業の睡眠関連事業にも携わる。著書に『ねこに教わる快眠レッスン60』(PHP研究所)、『幸せを呼ぶ 快眠ヒーリング』(日本実業出版社)などがある。
オフィシャルサイト: http://sleepeace.com/



