メディアの垣根を軽々と飛翔して発信を続ける水道橋博士さん。身近な友人につぶやきかけるようなツイッターから、遠大な夢の記録装置の開発まで、その「夢」は果てしなく広がっていく――。好奇心みなぎる大好評インタビューの第2回!文章を書くということ
三橋美穂(以下、三橋) 博士は、一般誌から東京都の広報誌までとても幅広く書いていらっしゃって、本当に書くということがライフワークになっていらっしゃるのかなと思うのですが、執筆の仕事は朝でしょうか。
水道橋博士(以下、水道橋) ツイッターは朝書いちゃいますね。
三橋 すごいですよね、更新の頻度が。
水道橋 ツイッターは日記だと思ってやっています。他の出演者の人もいるし、もしファンの人に先乗りされたりすると困るから、「〜なう」みたいなことは書かないですけど。日常の起きてから寝るまでは、すべて僕は透明化していますよ、基本的に。
三橋 いろんなことをよくご存じというか、平たくいうと物知りだなあというふうに思ったんですよ。アンテナというのはどのように張っていらっしゃるんですか。
水道橋 もともといろんなものに関心はありますけど、基本的には芸能界に入ってから、これまであまりそういう話題をすることはなかったんですよね。でも、ツイッターとかやると反応があるじゃないですか。「今週の週刊ポストの○○はすごい」とかツイートすると、「確かに」みたいな。そうやって僕が関心を持っているようなことがツイッターのリアクションを通して広がっていくから、何かアンテナを張っているような感じになるのかな。でも、それは僕の体質というか、芸能界に入る前からそうだから。もともとそうだったけど、話し相手が増えたという感じですね、ツイッターで。
三橋 ツイッターのおかげで「こちら」(パラマウントベッド)に来ていただいたんですよね。本当に今っていう時代、すごいなと思います。
水道橋 よくツイッターは口下手のアンプだという言い方をしますが、実は僕は酒場でそういうことあまり大声でしゃべっているタイプでもないんです。高らかに議論しているタイプじゃなくて、「ふーん」ってずっと聞いている感じだから。
三橋 そうなんですか。飲んだときはそんな感じですか。
水道橋 そうですね。そんなに飲むほどに酔うほどに激論して、みたいなことはないので。そういう意味では、ツイッターでは自分がちょっと疑問に思うことをつぶやいていることもあるし。例えば関心があること、「ベッドにはどういう種類がある」とかね。そういうのに対するいろんなリプライがあるという面白さがありますよね。
夢の記録再生装置構想
三橋 最近興味を持ち始めた新しい分野とか、開拓していこうという分野はありますか。
水道橋 いろいろありますが、睡眠に絡めていうと、先日、劇作家の長塚圭史さんを番組のゲストに迎えるので、長塚さんの資料を読んでいたんですね、インタビューとかを。そこで、長塚さんが題材を夢に取るようになったという話をしていましてね。
三橋 夢をヒントに。
水道橋 そう。それは多くの作家がやることですよ。夢を題材に、自分が見た夢から物語を作っていくというのは。これはよくあるパターンだなと思いながら読んでいて、自動書記とか、そういう無意識が書かせるものを劇に取り込んでいくというような話も書いていらして、ほうほうと思いながら、それを夜寝る前に読んだんですね。で、資料を置いて寝ていたら、その日見た夢というのが、僕が猫ひろしと一緒に上野のパンダを檻の中から放つというものなんです。まあ猫ひろしのことを夢見るのも、その頃ちょっと彼が話題になっていたからというのはわかるし、パンダはちょうど来日するタイミングで、その話を「ミヤネ屋」でやっていたからだというのもわかる。パンダを開放するというのも、ジョン・アーヴィングの「熊を放つ」という短編があるから、そういうところから連想してきているだろうなというのも全部わかるんです。自己分析してね。でもわからないのは、その後、猫ひろしとパンダを食べるんです。そこがわからない。何で俺はパンダをあの夢の中で食べたんだろう? それは僕という主体にはない行動でしょう。ストーリーを決めている主体であるはずの僕の中にはない発想が、物語として行われている。なぜそれを見たんだろうと思ったときに、自分以外の人が物語を作っている感覚って、夢に多いんですけど、そういう「劇」みたいなものを感じたんですよね。それで、長塚圭史が言わんとする、長塚圭史が自分以外の人を座長にして、架空の座長ですけど、その人のために劇を書くというような芝居、新しい試みをやっているんだけれど、まさに俺が見たのはそういうことなんだというのがよくわかりました。そうか、ちょっとこういう夢で作劇するとか、自動書記とか、あるパターンだなと思って、ちょっと馬鹿にしていたけれど、言わんとすることはこれなんだなと自分でわかって。夢を意識して何かに生かすというのは面白いぞというのを最近思って、夢日記をやろうかなと思っている。という長いお話でした。
三橋 (笑)。面白いですね。本当に眠りには無限の可能性があるので。
水道橋 そうなんですよ。実は寝ている間の物語って絶対面白いんです。自分の倫理とかに制御をかけていないから。物語などを書く人にとっては無限の可能性が眠っているはずなんですよ。だから、そこを開いてやるほうがいい。でも、それをやると狂うというのもあるけどんだよね。現実と夢がわからなくなっていって。映画の「インセプション」のようなことになっていく可能性もあるから難しいんだけれどね。今後は夢の再生装置を作ります、アップルと! 夢を録画して、再生できる装置を今作ろうとしています! といって狂人になった博士......。
三橋 (笑)。でも本当にできたら面白いですね。寝て起きるとひらめき度が上がるというようなデータもあるんです。例えば、眠らないで、ひらめきを必要とするある問題を解いた。それから8時間寝てからもう一度解いた。そういうとき、きちんと眠ってから問題を解いていく方が成績が良かったというようなデータもあるので、やはりこれから眠りというのは、ただ疲れを取るだけではなくて、その先の可能性の分野についても開けていくんじゃないかなと思いますね。
水道橋 何か積極的に善用出来ないかなと思っているんです。無意識の時間を1日8時間過ごしているとしたら、そこの生産性を高められないのかと。夢の録画装置でもう1度再生することができたら面白いと思うんですけど。面白いというか、物語作家などにとっては寝ている間にまた生産しているということですからね。
三橋 そうですね。夢の記録再生装置ですか、面白いなあ。
本を読むということ
三橋 眠りというところからは少し離れてしまうかもしれませんが、お忙しくしていらっしゃって、本などはどういった時間に読まれていらっしゃるのでしょうか。読書や映画など、情報をインプットするのに、どういうふうに時間を作られていらっしゃるのでしょうか。
水道橋 人が思っているほど読んでいないんですよね。「読書家の博士にお話を聞きますが」みたいなインタビューが多いですが、それは本当に俺など畏れ多いですよといつも思っているんです。読書って、読めば読むほど自分が本を読んでいないことがわかるわけじゃないですか。「この本もこの本も読んでいない」ということに気がついていく過程ですよね。つまり、読めば読むほど「枯渇」していくんですよ。読書量が増えれば増えるほど、必要な読書量が増えていくんです。だから、どうして本を読むのかといえば、枯渇しているのを意識しているから読むのでしょうね。これを読んだら、これを読んでおかないとわからないや、と次々に手を出して読む。それで、絶対値の時間の作り方というと、本当に、僕はあまりぼうっとしている時間がないですね。新幹線でずっと外を眺めている人っているじゃないですか。ああいうの、1回もない。
三橋 そうなんですか。
水道橋 活字中毒なんですね、一種の。家から駅に行くまで1分ぐらいの近さだとしても、その1分間、普通に歩くっていうことができない。iPhoneで何か面白い話をつけて、ヘッドホンをつけて、1分ぐらいでも何かを聞いているみたいな感じです。
歯医者さんで治療するにしても、ずっとヘッドホンをつけてポッドキャストを聞いているのは俺ぐらいじゃないかなと思って。それで先生がヘッドホン外して「今度こう行きますよ」「はいはい」みたいな感じをずっとやっているんです。治療台のコップの横にどかっと資料置いてずっと読んでいる人はあまりいない。
三橋 見たことないですね。
水道橋 でしょう? でも、僕からすると、歯医者さんで2時間、3時間費やす人って、みんな何をやっているんだろうと思ってすごく不思議なんだけど。あの時間の流れが、僕には耐えられないですよね。美容室とかでもそうですが。
三橋 美容室でも?
水道橋 無理無理無理。美容室で美容師の人と会話をするというのがすごい苦手。だから最近は1,000円カットしか絶対に行かないんですけど。そこで普通に会話するのはいいですけど、美容院の人も僕に合わせてくれようとして、例えば「格闘技がお好きなんですよね」とか言ってくれるのですが、その人は全く好きじゃないんですよ。それで全く噛み合ない会話をしている時間が駄目なんです。「そうか、この人は俺に合わせてくれているな」というのがわかる感じがもう駄目。
三橋 それで、じゃあもうしゃべらなくていいようにと1,000円カットで。
水道橋 この人は(髪を切られている間に)こんだけ読もうとしているんだというと語りかけられないじゃないですか。
「メディアの牢獄」に生きて
水道橋 いわゆる読まれるべき本だけに限っても、もう一生で絶対読めない数の本が既に家の中に列をなしてます。その上、週刊誌だ何だ、ラジオだ何だ、毎日あって、映画がたくさんあったりするわけだから。献本もすごく多いし、そういう意味ではメディアの牢獄の中にいるのだと思います。それをやめたければ、仕事を辞めるのが一番早いです。
三橋 でも、引っ張りだこですからね。
水道橋 いや......。だけど、原始的な楽しさに俺は触れていなくて、永遠に続くこのメディアの牢獄の中で生きていかなければいけないという苦しさに悲鳴を上げるのだったら、いっそ仕事を辞めて沖縄に住むとかすればいいと思うんですけれどね。という夢を思い描いたら、沖縄本とか雑誌をいっぱい買ってきて、ずっと見ながら妄想しているんですよ。沖縄に暮らす方法とかね。そういうのをしばらく続けていました。
三橋 スズキさん(博士の秘書)からご覧になって、博士にはどんな印象をお持ちですか。
スズキ ただ何となくテレビを見ていることがないんで、不思議な感じですね。
三橋 どういう風に見ていらっしゃるんですか。
水道橋 意識的に見ているんですよ。確実にこれは必要だなと思うから見ている。偶然ついていたテレビをずっと眺めているということは、絶対にないです。ポリティカルな人だという風に思われているけれど、もともとすごいノンポリだし、別にそんなにニュースが好きだというわけではない。「ミヤネ屋」とかでコメンテーターをやらなければいけないし、仕事上政治家へのインタビューをやり始めたから、関心を持つようになりましたけれど、もともとはそれほど関心ないから。ニュースも別に見なくてもいいんだけれど、何のニュースだかさっぱりわからないコメンテーターっていないじゃないですか。だから、毎日ニュースは絶対に一番先に見るというノルマは自分に課すわけです。それから、ツイッターのタイムライン上に気になる番組っていっぱいみんな書いているから、あれ見ていなかったなと思うと、家にスパイダーというすべての番組を録画できる機械を持っているから、どこにでも持って行けるわけじゃない。
三橋 では話題の番組はたいてい見ている。
水道橋 それも1.8倍速で見ていますから。
三橋 じゃあ脳の中の回転速度も相当早いですね。
水道橋 そう。早いというか、そうじゃないと追いつかなくなっています。それが楽しいかというと、別に楽しいわけでもないですが。
三橋 常にエンジンが回っていらっしゃるように思うのですが、リラックスする場所は、どこですか。
水道橋 ベッドですよ(笑)。だから、僕にとってのベッドというのは、本当に部屋の中のメインを占めているんですよ。この間「メレンゲの気持ち」で紹介したときにも言っているんですけど、既に介護用ベッドを買って、大画面テレビがあって、スパイダーがあって、机が置いてあって、リモコンをすべて両面テープで全部留められるようにして、そしてスズキ秘書がいるというこの態勢が、僕の中で完全に完璧な状態です。その最強の環境を僕が作っているというばかばかしい講釈をしていたんですが。もう全部揃えて、あと足りないのは尿瓶だけです(笑)。
【三橋美穂さんの取材後記】名は体を表すとはよくいったもので、"博士"の名のごとく博識で、常にアンテナを張り巡らせている水道橋博士さん。「好きでやっているわけではない」と言いながら、実際にやれてしまう、意志の強さを感じました。自分の意志で"博士である自分"を作ってきたのでしょう。そして、意志が強いゆえにフル稼働している脳を休ませる大切さも知っていて、意図的に休息をとり、さらに睡眠(夢)を活用しようというアイディアまで!休息も活動に転換してしまう博士には脱帽です。これからも目が離せません。
(終)
(構成:山崎隆広/写真:森亨)
水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1962年8月18日生。岡山県倉敷市出身。コンビ名・浅草キッド。出演番組は『総合診療医 ドクターG』(NHK)『別冊アサ秘ジャーナル』(TBS)、『浅草映画研究会』(洋画★シネフィル・イマジカ)など。著書に『お笑い男の星座』、水道橋博士名義では、『博士の異常な健康』、『筋肉バカの壁』、『本業』など多数あり。特技:宅地建物取引、漢字検定(2級)、ベストアサイーニスト、他。(水道橋博士の「博士の悪道日記」より http://blog.livedoor.jp/s_hakase/)
三橋美穂(みはし・みほ)
寝具メーカーでの商品開発や眠りのアドバイザー、マーケティング、広報などを経験後、研究開発部門長を経て、 2003年に独立。心の環境、体の環境、睡眠の環境を整えることが快眠の3つの柱と考え、睡眠とストレス、食事、色彩、体操、呼吸法、寝具などとの関わりについて研究。講演や執筆、個人相談を通して、眠りの大切さや快眠の工夫、寝具の選び方などを提案している。特に枕は、その人の頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど。睡眠を多角的にとらえ、その幅広い知識と、実践的でわかりやすいアドバイスには定評がある。ベッドメーカーのコンサルティングや、ホテルや旅館の客室コーディネイトなど、企業の睡眠関連事業にも携わる。著書に『ねこに教わる快眠レッスン60』(PHP研究所)、『幸せを呼ぶ 快眠ヒーリング』(日本実業出版社)などがある。
オフィシャルサイト: http://sleepeace.com/



